最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)17号 判決 1952年11月14日
茨城県鹿島郡波崎町
上告人
菅崎碩
同所
上告人
糸川清太郎
右両名訴訟代理人弁護士
松田真男
静岡県蒲原町蒲原二三四四番地
被上告人
杉山高蔵
右当事者間の売掛代金請求事件について、東京高等裁判所が昭和二六年一二月二七日言渡した判決に対し、上告人等から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人等の負担とする。
理由
上告状並びに上告理由書記載の上告理由各第一点について、
記録によれば、被上告人(被控訴人)は、原審において適法な呼出を受けながら、原審の最初になすべき口頭弁論期日に出頭しなかつたため、原審裁判所は、民訴一三八条の規定により、不出頭の被上告人において、その提出にかかる答弁書記載の事項を陳述したものと看做し、出頭した上告人(控訴人)両名に弁論を命じたことが明らかである。従つて、原判決には、原審が被上告人の弁論なくして判決した違法があるとの論旨は、これを採用することはできない。
その余の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。
よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)
昭和二七年(オ)第一七号
上告人 菅崎碩
上告人 糸川清太郎
被上告人 杉山高蔵
上告代理人弁護士松田真男上告理由
控訴審ニ於テハ被控訴人ハ何等出廷セズ口頭弁論期日ニ於テ何等ノ弁論陳述モナサズ欠席シタルニ拘ハラズ控訴裁判所ハ欠席シタル被控訴人ガ何等ノ弁論主張陳述ナキニ、之レアルモノノ如ク誤判シテ控訴人ノ出席シテ原判決ヲ取消シ被控訴人控訴ノ請求ヲ為シタルニ之ヲ省ミズ何等ノ主張ナキ被控訴人勝訴ノ判決ヲ為シタルハ正ニ判断ヲ誤リタル違法アルモノニシテ欠席シテ口頭弁論ノ主張ナキヲ主張アリトシタル事実ノ重大ナル誤認ト判断ノ違法アルモノニシテ到底破毀ヲ免レズ。
一、上告人ハ控訴審ニ於テ本件ハ売買ニ非ズシテ被控訴人ガ控訴人ニ対シ勝手ニ送附シタルモノニシテ、被控訴人ハ品質不良ノ為返還セントシツツアリタルモノニテ、之ヲ売買トカ称スルハ全ク失当ナル旨並ニ運送賃立替等依頼シタル事実モナキニ又立替ヲ頼ミタル事実モナキニ慢然之ヲ十分調ベズシテ然モ被控訴人欠席ノママ控訴人出廷出席シテ此ノ旨開陳シタルニ之ガ証人並証拠ノ取調ベヲ為サズシテ俄カニ判決ヲ為シタルハ審理不尽ノ違法アリ少クモ公判ニ出廷シタル控訴人本人ノ取調ヲ為スカ職権ヲ以テ控訴人本人ノ取調ヲ為サザルベカラザルニ拘ハラズ何等ノ証拠調モナサズ然モ欠席セル被控訴人ノ主張ナキモノニ対シ口頭弁論アリタル如ク判断ヲ誤リタルハ裁判ハ証拠調ヲ為シテ十分ノ機会ヲ与フベキニ拙速ニモ一切之ガ機会ヲモ与ヘズ出廷シタル控訴人ノ取調ベモナサズシテ、証拠調ノ何等ノ措置ヲモトラズシテ判決シタル権利ノ行使ヲ阻害シ審理ヲ尽サザルノ違法アルモノニシテ到底破毀ヲ免レズ御庁ニ於テ此点十分ノ取調ベヲ給ハリ破毀差戻シ相成度此段控訴審判決ハ審理不尽ノ違法主張セルモノニ対シ証拠調ヲ為サザルノ権利蹂躪ノ違法アリ到底破毀ヲ免レズ。
一、控訴審判決ハ控訴人等ノ連帯負担ヲ判決シタルモ、控訴人等ハ連帯シテ共同シテ被控訴人ヨリ物品ヲ注文シタル事実及証拠毫末モナシ控訴人両名ガ偶々訴ヘラレタルモノナルモ両名全ク別個ニ営業上別々ノ場所ニ別々ノ状態ニ営業シ居ルモノニシテ何等ノ関連ナキ他人ナリ。
被控訴人(被上告人)ハ何人ニ送リタリト為スヤ控訴人(上告人)中ノ何人ニ何処へ荷物ヲ送リタリト為スヤ其ノ一人ニ送ラハ場所ハ一ツナリ然ルニ離レ離レノ全然無関係ノ二個所ノ別々ノ営業者ナリ(上告人等ハ)其ノ間ノ関連ナキモノニ対シ両名ヲ連帯シテ運送賃立替金モ払ヘトカ、品物代金ヲ払ヘトカハ何ノ根拠ヲ以テナスヤ。
是等全ク不当不法ニシテ何等連帯ノ事実毫末モナキニ控訴審ニ於テハ原審同様連帯シテ支払ヘトセルハ連帯債務ノ法則ヲ誤リタル違法アルモノニシテ之ニ関スル何等ノ証拠ナキニ尚連帯シテ支払ヘトセルハ証拠ナキ証拠ヲ作為独断シタル違法アルモノニシテ証拠ハ現存ヲ要スルニ証拠ナキモノニ対シ虚無ノ証拠ヲ存在ト誤認シタル採証法則ニ違背セルモノニシテ且連帯債務ノ法令違反アルモノニシテ控訴審ハ此ノ点ニ於テ到底破毀ヲ免レズ。
仍テ上告ニ及ブ次第ナリ。
以上
昭和二七年(オ)第一七号
上告人 菅崎碩
同 糸川清太郞
被上告人 杉山高藏
上告代理人弁護士松田眞男ノ上告理由
一、控訴審ニ於テ被控訴人杉山高藏ハ何等出廷セズ、口頭弁論期日ノ公判廷ニ於テ一度モ出廷シタルコトナシ。即チ口頭弁論ノ陳述何等ナク結局何等ノ主張ナキモノナリ。控訴審判決ハ被上告人ガ何等ノ主張ナク弁論陳述ナキニ拘ラズ、第一審ノ陳述アル如ク誤判シテ賣掛代金ノ主張アリタルモノトシ、弁論ノ陳述アリタルモノトシタル事実誤認ノ重大ナル誤謬アルモノニ於テ到底破毀ヲ免レズ。
一、原審判決ハ被上告人ニ於テ賣買代金ノ主張ヲナシタルモノトシ乍ラ、甲第一号証ノ借用証ヲ提出シ金員借用証ニヨル貸借ヲ主張セリ。上告人(被告)ハ賣買シタルコトナシ品借リニシテ貸借ナリトシ、甲第一号証ノ貸借ト一致セリ、コレガ貸借ニハ返濟期限ナシ、上告人ニ於テハ貸借ニオケル弁濟期限(品物又ハ金員何レニシテモ)来ラザルニ於テハコレガ返濟期未到来ナルニヨリ返濟義務ナク請求權ナキコトヲ主張セル趣旨ナルコト、全論旨主張ヨリ判斷セラルルニ拘ラズ(原審)控訴審ハコレガ判斷ヲナサズシテ、被上告人ガ終始欠席ノママ何等ノ陳述ナク不明ノママ俄カニ上告人ノ主張ヲ排斥シテ賣買トシタルハ、甲第一号証借用証関係ヲ無視シタル明ラカナル証拠ノ存在ニ拘ラズ採証ノ法則ヲ誤リタル違法アルモノニシテ、少クモ事実審理不盡ノ違法アルモノトシテ到底破毀ヲ免レザルモノナリ。
一、上告人ト被上告人間ニ於テハ本件債權債務関係一切ヲ甲第一号証ノ昭和二十五年六月十二日ノ五万一千円ノ借用証書ニシタルコト、被上告人提出ノ甲第一号証ニヨリ明ラカナリ。該借用証ハ上告人、被上告人間ノ借用証債權債務ニシテ運賃ノ如キ一切コレニ入レタル兩者間ノ債權、債務ノ借用関係ヲ証書ニシ金員借用証書トシタルモノニシテ、而モコレニハ弁濟期限ナキモノナリ。適宜金員ノ返濟ヲナスカ又ハ品物ノ返濟ヲナスカ、何レニシテモ貸借ト変更シタルモノナルハ明白ナル処ナリ。賣掛代金運送立替金ノ請求債權ハ右貸借証書ニ変リ、金員又ハ同等品物ノ返濟ニヨル解決トナリ変リタルモノトシテ、而モ当事者間ニソノ返濟期限ノ定メナキコト証書ニヨリ明確ナル処ナリ。原審、控訴審ハ須ラクコレガ事実ヲ審理シ、控訴人ノ「品借リ」ノ意味ヲ解釋シ十分ナルコノ点ノ審理ヲナシテ判斷判決スベキニ拘ラズ、何等コレガ主張ニ對シ判斷理由ヲ附セズ主張ナキモノニ判斷シタル違法アルモノトシテ原審、控訴審ノ判決ハ到底破毀ヲ免レズ。控訴審ニ於テハ被上告人ハ何等一切出廷セズ欠席シテコレガ主張ヲナサズ。仍テ主張ナキ主張ヲ判斷シ上告人ガ主張シタル右主張ニ對シ何等理由ヲ附セザル違法アルモノニシテ結局理由不備ノ違法アルモノニシテ到底破毀ヲ免レズ又判斷違脱ノ違法アルモノニシテ到底破毀ヲ免レズ。
以上